恐怖の経験は、なぜ慣れないのか
私達は毎日様々な経験をしています。
そして、たいていのことは経験を重ねるうちに慣れていきます。
最初は不安だったことも、何度も経験していくうちに何も感じなくなっていきます。
私は、小さい頃、初めて一人で新幹線に乗った時の不安感をよく覚えています。今では、新幹線に乗っても、あのときのような気持ちになることはありません。同じ経験を何度もするうちに、次第に大丈夫だということがわかってくるのです。
それにも関らず、慣れることがない経験というものがあります。
「あの人に会う時はいつも憂鬱」
「人前でプレゼンをするときはいつも緊張する」
「怒られるたびに気分が落ち込む」
特定の人や状況を恐れているという意味で、これは「恐怖の経験」といえるでしょう。恐怖の経験は、どうして他の経験と同じように慣れていかないのか。
それは、その経験から生じる嫌な気持ちを拒絶しているからです。
嫌な思いをしたくない、傷つきたくない、恥ずかしい思いをしたくない。
嫌な気持ちになることを必死になって避けようとします。
嫌な感情が生じても、自分の気持ちをごまかして、それを受け取ろうとしません。
結局、耐えがたかったという記憶だけが残ります。
経験が蓄積しないのです。
何回同じことを経験しても、不安や恐怖心は薄れません。
嫌な気持ちになってもよいと考える
ここで重要なことは、自分の感情をしっかり受け取るということです。嫌な感情も拒否せずに受け取って、感じきってしまえば、嫌な経験が経験値として蓄積します。
「不安だなあ」、「怖いなあ」、「恥ずかしいなあ」と心の中でつぶやいてみてください。自分は嫌な気分になっているということを意識してみてください。そして自分はそれでも大丈夫なんだと考えてみましょう。
これができるようになると、嫌な気持ちになっても、結局特に困ったことは起こらないということがわかってきます。
私達は、将来のことを悩んだり不安に思ったりしますが、それが一度済んでしまえば、もうそのことで悩んだりはしません。不安の対象も、いずれは過去のことになり、思い出すこともなくなります。
嫌な気持ちをを味わうのも一時のことです。しかも、慣れてくるに従って、だんだんと毎日が楽になってきます。
自分がいかに自分の気持ちを抑え込んでいたか。
恐怖を避けることに費やしていた膨大なエネルギーがいかに無駄であったか。
気づけるようになる日がきっと来ます。
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